器具・器材・リネン類の洗浄・消毒・滅菌
- 当院では、吸引瓶を消毒せず洗浄のみですが、使用するブラシが耐性菌感染確認患者と未確認患者と分けた共用ブラシで毎日食器用洗剤で洗浄水洗いのあと患者ごと返却しています。カビが発生したときなどに洗浄・消毒をしていますが、この方法でも問題はありませんか。
- ご質問内容から、中央配管に接続する吸引びんを耐性菌検出の有無で分け、洗浄は同じブラシで用手洗浄されている(耐性菌検出の無い患者全員分の吸引瓶を洗浄後、耐性菌検出患者全員分の洗浄を行っている等)と推察されます。
現在行われている方法では、環境を介した感染や器具関連感染を起こす危険性があるため、以下の方法を参考に、安全な方法をご施設でご検討ください。
まず、器材の処理方法は、耐性菌の有無のみで分けてはいけません。
理由は、未検査者も何らかの感染性微生物を有している場合があり、また、検査者も検査頻度により耐性菌等の検出の有無が左右され、さらに、耐性菌検出者と同様に保菌・定着状態でも、使用器材や周囲環境は汚染されており、処理を誤ると周囲の人や環境や器具を汚染するからです。
そのため、専用の処理が必要な物品を除く多くの器材は、使用部位や用途で区分される、「スポルディングの分類」に則り洗浄・消毒・滅菌を行います。
吸引びんは、ノンクリティカル器具に区分されますが、再使用の場合、洗浄後に消毒・乾燥が必要になります。
洗浄担当者の感染曝露の危険性や、作業効率や経済性などを考慮したより良い方法は、吸引びんのディスポ可、または、自動熱水洗浄・消毒・乾燥が行えるベッドパンウォッシャーか、卓上自動洗浄乾燥機の導入だと思います。今回は、ベッドパンウォッシャー等が無い場合の回答となることをご承知ください。
(※吸引びん消毒中の吸引と、洗浄個数が多い場合のブラシの汚染に備え、吸引びんとブラシを増やすことが必要です。)
@手指衛生後、個人防護具を装着。(防水ガウンまたはエプロン、サージカルマスク、ゴーグルまたはアイシールド、手袋)
A使用後の吸引びんを回収する。
B洗浄場所の汚物槽に吸引物を静かに流す。
C吸引びんを酵素系洗浄剤と柄付きブラシにより洗浄後、0.02〜0.05%の次亜塩素酸Na溶液に浸漬消毒し、乾燥させる。(吸引びん全体が浸かる大きさの容器が必要・金属部分の腐食に注意。拭き取り乾燥の場合は、紙などのディスポクロスで)
D吸引びんの洗浄終了後、ブラシ全体を洗浄後に消毒Cの容器で浮かないよう浸漬消毒し、乾燥させる。
(洗浄場所の環境も十分洗浄や消毒を行う。)
E新しいサージカルマスクと手袋を装着し、吸引器周囲を0.02〜0.05%の次亜塩素酸Na溶液を浸したクロスで擦式消毒後、清潔な吸引びんを配置する。(手袋と消毒用クロスは1患者ごとに交換。)
F終了後、PPEを外し、手指衛生を行う。()
また、ブラシのカビの発生を目視できるということは、長時間ブラシが湿った環境に置かれていると
推察されます。洗浄場所の換気状況や周囲環境の洗浄消毒もご確認ください。