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感染対策Q&A

MRSA・緑膿菌

Q
特別養護老人ホームで、今後どのような感染症を保菌・発症している
方も受け入れて行く方針が決定された。今まで、B型・C型肝炎や疥癬
疑い、排泄物からのMRSA,緑膿菌が検出されている方の介護経験は
あるが、痰からMRSAが出ている方は関わったことがありません。介護
職は知識や経験が浅く、目に見えないもの(菌やウイルス)への感染・
不潔に対する理解が乏しいので、扱いや手技等を指導しても今ひとつ
徹底されないのが現状です。
このような状況で、何のガイドラインもないまま受け入れることに非常に
抵抗・不安を感じています。今の状況で、痰からMRSA(2+)が検出した
方を受け入れることについて、どう考えますか。また、介護職への効果的
な指導方法について教えてください。
(a)
今までHBV、HCV、緑膿菌、排泄物からのMRSA、疥癬疑いの介護
経験があるということで安心しました。基本的な感染対策の考え方、実
施について熟知しておられると推察いたします。今後とも根気よく職員
一人ひとりがうまくやれるよう日々指導して行かれることが重要と思い
ますが、各自感染対策をきちんとしているかを勤務の評価項目に入れ
たり、処置をするとき言葉に出させる(例えば、JRの職員が指呼をする
ように、アルコール手洗い良し、手袋装着良し等言いながら作業する)
ことも一方法です。ガイドラインは言い訳のため置いておくもので、殆ん
どの人は読まないとまずみて間違いないでしょう。ホームに入所いう
点から、あくまで”MRSAの保菌者に対する対策”と理解しました。
 @MRSA感染は、接触感染が主体で、飛沫感染は極めてまれと考え
   られます。念を入れる なら職員に標準予防策、接触予防策につ
   いて基本を再度徹底させる事が大切です。
   項目として「手洗い・手袋の周知徹底」「ガウンの着用」「器具」「患者
   の配置」「患者の 搬送」「清掃」など。教科書として色々ありますが、
   ”実践MRSA対策”(メディカ出版)、”病院感染対策ガイドライン”
   (各施設に配布済み)などがあります。
 A喀痰培養から単に検出されるだけで、咳もしない方なら、あまり問
   題ありませんが、気管切開などしていて、あるいは咳嗽が激しく、
   他にMRSAを広範囲に汚染させる恐れがあれば、他の患者様との
   距離も必要になります。
 Bむしろ職員、訪問客などが持ち込んだ感冒やインフルエンザが原
  因で、こうしたMRSA保菌者が肺炎の合併・悪化を生じる事がありま
  すから、介護職員の健康状態チェックや職員・入所者へのインフル
  エンザワクチン接種などを勧めてください。

(b)
痰が強く、喀痰を周囲にまき散らしている場合には個室隔離して、
ガウンテクニック及び手袋が必要です。もちろん、マスクも必要と
なってきます。しかし、咳が見られず、喀痰検査のみでMRSAが確
認された場合には、周囲にまき散らしていることはないので、手指
消毒のみで十分ということになります。MRSA(2+)についてですが、
これはグラム染色(2+)であれば、かなりのMRSA量になりますので、
隔離が必要になるかもしれません。しかし、グラム染色で陽性球菌
が殆んど見られず、培養にてMRSAが確認されたという意味であれば
菌の量は多くないので、隔離は必要ではありません。MRSA(2+)の
確認が必要です。

(c)
喀痰からMRSAが検出された場合、患者さんの喀痰にどの程度の
排菌量があるかで、感染対策を考えたいと思います。この患者さん
は、感染症状はないが、上気道にMRSAが定着している状態ですね。
痰を喀出するとき、飛沫が飛んだり、痰の扱いに気をつけないと、他
の人に感染する可能性がありますので、痰の量が多いときは、厳重
に管理する必要があります。
しかし、痰の量が少なく、排菌がなければ通常の標準予防策で対応
可ですので、無理に除菌する必要はないと思います。
 従って、排菌の程度を問題にしていただき、排菌がないと判断され
れば、MRSAを保菌していても他の入所者に感染させる危険性は低
いと考えられるので、入所を拒否する理由にはならないと思います。
排菌している場合は、ケースバイケースで老人ホームの職員の方に
は、標準予防策の考え方をしっかり教育してください。

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