サーベイランス
- サーベイランスの実際がよくわかりません。実例を紹介していただ
けるとありがたいです。
- (a)
サーベイランスには、包括的サーベイランスとターゲットサーベイ
ランスがあります。前者は病院全体および病原体を対象とします。
後者はターゲットを決めて、集中的にサーベイランスをするというも
のです。例えば、ICUの中心静脈カテーテルを6ヶ月間施行すると
いったものです。
包括的サーベイランスは、マンパワーを要しますので、最近はター
ゲットサーベイランスを行う施設が多くなってきています。ターゲット
サーベイランスは、他の施設とデータを比較することが可能ですが、
サーベイランスをしていないところの集団感染を感知できないという
弱点はあります。
サーベイランスの目的は、院内感染を減らすこととアウトブレイク
を感知することなどがあります。また、新しい感染対策を施行した
場合には、その有効性の確認ということにも利用されます。実際、
サーベイランスを始めるだけで、職員が気をつけるようになり、院内
感染が減少するということは多いようです。
(b)
当院では数年前から、@カテーテル関連血流感染、Aカテーテル
関連尿路感染、B針刺し・切創事故のサーベイランスを続けていま
す。
@は、細菌検査のオーダーで血液培養またはカテーテル先端培
養の培養陽性例、担当医に血流感染に該当するか文書で問い
合わせをしています。発生率に関しては、薬剤部から月の中心
静脈薬剤混注延べ人数をもらって母数としています。
Aに関しても同様に、微生物検査室からきたデータに基づき主治
医に問い合わせすれば簡単です。
細かい点は、勉強会などでお会いしてお話しますので、ご希望なら
ご連絡ください。
今後、多くの病院へのDPCの拡大導入が予想されるので、SSIサー
ベイランスの導入を検討中ですが、こちらのほうが@ABより大変と
思われます。
(c)
サーベイランスを行うには、マンパワーが必要なので院内でどれ
だけの職員を割当てられるかにより、サーベイランスの種類が限定
されてくると思います。サーベイランス対象の感染症の定義などをき
ちんと院内で統一して(一般にはCDCの定義)始めます。MRSA感染、
血流感染、尿路感染など院内での採用優先順位を決めて始めて
ください。
サーベイランスの実際についても、成書が色々ありますので参考
にしてください。血流感染を例に取れば、疑い例には血液培養(最
低2セット)を必ず取り、病棟に行きコンタミか実際の感染か判断し
ます。血液培養陽性例は、必ず感染対策チーム(ICT)に情報が入
るようにしておくことも必要です。点滴ルートの挿入部感染の判断は、
複数で最初は行い、判断基準の目線を合わせる努力が必要です。
病棟のリンクナースの役割付けも必要です。院内での点滴の数が
多いとデータをパソコンに入力するにも手間隙かかります。最初から、
うまく行くことはありません。継続が重要で、研究会などで他院の良
いアイデアを取り入れるなどして工夫も必要です。