尿路感染対策
- 平成20年度感染対策支援セミナーでの採尿カップや集尿容器の清潔
管理についての説明では、消毒する必要があるとのことでした。しかし、
実際現場では限界もあるので、対応可能な対策として具体的にはどの
ようにすればよいか教えてください。
現在、当院では次のように取り扱っています。
採尿カップ :
個人専用で入院から退院まで同じカップを使用している。
採尿後は患者さんが水洗してフックにかけておく。この繰り返しです。
排尿バッグの集尿容器 :
蓄尿瓶を個別的に使用し、使用後は食器洗浄剤を用いて洗浄 した上で自然乾燥させ
再利用している。
この上、まだ消毒が必要ですか。
- 器材を患者間で共有する場合や同一患者でも時間を置いて再使用する
場合には、細菌繁殖や交差感染を防ぐことが必要です。有機物を除去す
るには洗浄剤による洗浄をします。そして、その器材の使用目的に沿って、
洗浄の後によく乾燥させて保管するだけでいいのか、消毒が必要なのか、
滅菌が必要なのか、を判断します。
採尿や蓄尿の管理上で問題になるのは、緑膿菌やセラチアを代表とした
水環境で繁殖しやすい微生物の存在です。蓄尿による多剤耐性緑膿菌に
よる交差感染の報告があります。採尿カップや尿収集容器の管理不良は
交差感染の集団発生の一因となりえますので、水ですすぐだけでは不十
分と考えます。乾燥が不十分な場合にも容器自体の微生物繁殖や周囲の
器材と環境の汚染も引き起こします。 最近では、熱処理洗浄効果が期待
できるベッドパンウォッシャーなどで洗浄消毒される施設も増えてきていま
す。しかし配置スペースや配管・配水管などの問題や価格が高価であるこ
とから、残念ながら全ての施設がすぐに導入できるものでもありません。
消毒効果のある洗浄剤(次亜塩素酸ナトリウムが添加された洗浄剤など)
で洗浄した後に確実に乾燥させるという管理を目指すことも1案です。
使用後の器材は、誰がどのように洗浄しどのように保管するのか根本から
見直し工夫することも必要になります。採尿カップを個人管理とするのな
ら、患者さんに正しい洗浄方法を指導することと保管場所の工夫が必要と
なってくるでしょう。また、共有するのであるのなら、患者さんには使用後
は使用済みの容器入れ等に入れていただき、職員が定期的に一括して
洗浄・消毒・乾燥し、患者さんが使用するときは洗浄消毒済みと明記した
場所から容器を取り使用する。など施設の状況(設備、使用器材、業務整
理、マンパワーなど)に応じた安全な管理方法を決定していくことになります。