下痢性疾患・感染性腸炎
- 流行性胃腸炎に関するマニュアルの作成にあたり、以下の内容についてアドバイスをお願いします。
- Q.A@
Q:ノロウイルスが流行しやすい時期には、食堂のテーブル・椅子・手すり・
キッチン の周りなどを次亜塩素酸ソーダを含ませた布巾で清掃して
いる。意味はあるのか?
A:無作為に日常的に次亜塩素酸ソーダで清掃する必要はありません。
感染疑いの患者がテーブルで嘔吐した際には次亜塩素酸ソーダなどで
周辺も含めて対処する必要があります。通常は食堂のテーブルなどは
病室のドアノブなどとともに一般的な清掃・整頓で十分です。
Q.AA
Q:吐物には次亜塩素酸ソーダをかけて廃棄した方がよいか?
A:多量の吐物にそのまま次亜塩素酸ソーダをかけても十分に撹拌され
なければ効果的ではありません。汚物を通常のペーパータオルなどで
拭き取った後に、汚染された床などを次亜塩素酸ソーダで浸したペパー
タオルで拭き取るようにすればよいです。吐物は感染性廃棄物として
業者に回収、焼却処理されることになります。
Q.AB
Q:吐物等で汚染したリネン類は、具体的にはどのように処理するのが
よいか?
A:使い捨てのマスク・ガウン・手袋を着用し、汚染リネンをビニール袋などに
入れ周囲を汚染しないように注意し、汚物を落とした後に0.02%次亜塩素
酸ソーダに10分以上ひたすか、85℃で1分以上熱湯消毒する(特に容積
があるものでは中心部がこの温度に達する必要があるので十分な時間
が必要)。消毒後に他のものと分けて洗濯すればよいと思います。
Q.AC
Q:嘔吐があった場合、何時どのタイミングで換気するのがよいか?
換気はウイルスの飛散を拡大するのでしない方がよいのか?
A:ノロウイルス(属)の感染は基本的には接触感染ですが、2006年末の
都内のホテルでの感染例のように、絨毯など液体を吸着する面に嘔吐
したような場合には、絨毯の乾燥後に塵埃とともにウイルスが飛散する
ことが考えられます。このホテルでの感染は、このような塵埃を吸入
する経路で感染が拡大したと考えられます。この場合も絨毯などを
次亜塩素酸ソーダをひたして拭き取るような対処を早期にすべき
だったのかもしれません。このような塵埃で感染が拡大する点に
ついて換気の明確な基準はありません。
Q.AD
Q:0.1%次亜塩素酸ソーダの作り置きしているが、有効期限はどのくらいか?
A:通常のハイターを希釈した場合にどのくらいの期間有効であるかに
ついては、メーカーでも明確な成績は持っていないようです。用事調整が
理想ではありますが煩雑であることもあり、一応当院では0.1%の
次亜塩素酸ソーダを密閉の容器に入れて一ヶ月間使用しています。
Q.AE
Q:発症した当人および同室者の食器はディスポーザブルで対応して
いるが、その必要性はあるか?
また、普通の食器を使用した場合、厨房におろすまでの処理は
どのようにすればよいか?
A:基本的に嘔吐・下痢症状の患者さんには可能なかぎり禁食で点滴が
理想ですが、軽度ならば(すぐ点滴が不可能ならば)水分摂取(スポーツ
飲料など)のみで対処したほうがよいです。食器の上に嘔吐するようで
あれば、汚物の処理後に次亜塩素酸ソーダで拭き取るような対処で
よいと思います。このような場合にも経済的に余裕があって、汚物の
処理や次亜塩素酸ソーダで拭き取るような対処をしないようにすると
すれば廃棄処分でもよいですが、(回復して)嘔吐もなく食事摂取が
可能であれば使い捨ての食器で対処する必要はありません。
Q.AF
Q:当施設は旧来型の大部屋が多いタイプで、発症すると1・2人では済ま
ないために、部屋移動はしないで、48時間部屋単位で感染対策を実施
している。感染対策は症状消失後何日で解除したらよいか?
(医師によって1週間または2週間と言われるが、その間にADL低下や
褥瘡発生などの問題が生じ困っている。)
A:施設の入所者の状況にもよりますが、認知症で排泄も職員が対応
するとすれば、少なくとも症状のある期間に加えて10日ぐらいはウイ
ルスが排泄されている可能性が高いので、この間も含めて感染拡大
の予防に留意すべきと考えます。あるいは症状のある患者さんだけを
同じ部屋に集めて対処するのもひとつの方法です。