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感染対策Q&A

器具・器材・リネン類の洗浄・消毒・滅菌

Q
気切孔からの痰の吸引に使用するチューブの消毒・保管について、
本来、1回使い切りが望ましいかと思いますが、経済的な理由から、
当院では消毒を行い、再使用しています。消毒から再使用までの手順
は、下記のとおりです。

 @蓋付き万能つぼを2つ(A,B)を用意する。
 AAには、※消エタベンザル液(以下、浸漬消毒剤)を、Bには0.025
   %塩化ベンザルコニウム(以下、リンス剤)を入れておく。
 B通常時は、Aに浸漬しておく。
 C痰吸引直前に、セッシでAからチューブを取り出し、Bに浸漬し、
   リンス剤を 吸引する。(チューブ内外側の浸漬用消毒剤を洗い
   流す目的で行う)
 D痰吸引
 E気切孔から抜去直後の吸引チューブの外側の汚れを含水カット
   綿で拭き取り、Aの浸漬用消毒剤を吸引し、チューブ内腔の汚れ
   を取る。
 F吸引チューブをAに浸漬し、終了する。
   吸引チューブ、万能つぼ、セッシ、含水カット綿、浸漬用消毒剤、
   リンス剤は、すべて原則として1日単位で交換するが、汚染時
   は随時交換する。

 ※ 消エタベンザル液の組成
   エコ消エタノール         50ml
   10%塩化ベンザルコニウム    5ml
   水道水           全量 500ml
   (消エタベンザル液のエタノール濃度は8%、塩化ベンザルコニウム
    濃度は0.1%です。)

以上を繰り返しております。
 前回の感染対策支援セミナー(平成17年3月開催)で 「吸引チューブ
の消毒剤への浸漬は行わない」という講義内容を聞き、検討を重ねま
したが、なかなか良い管理方法が見つかりませんでした。経済的で、
効率よく管理する方法をご指導ください。
私たちの病院でも数年前までは、気管内吸引チューブは各勤務1回
の交換でやってきておりました。消毒液に浸漬することでチューブの無
菌性を保持できると考えていました。気管切開している以上、気管内は
もはや無菌状態とは言えないし、浸漬液の無菌性が保たれれば吸引
チューブ内の汚染は、一方通行のため気管内に及ぶ可能性は低いだろ
うと考えていました。
 ところがCDCの基準では、気管内チューブは本来無菌的な気管の粘
膜に使用する器具で、セミクリティカルに分類されます。従って、殺菌さ
れた器具を使用しなければならず、殺菌されない器具の使用は認めら
れないことになりました。人工呼吸器やその回路、加湿に用いる容器や
水、人工鼻、在宅における手指衛生用品などの周辺の器具の無菌化
や操作の清潔確保ができるようになって気管内吸引チューブのみ従来
通りとは行かなくなったということです。
 ご質問のやり方で殺菌できるのかどうかですが、気管内吸引チューブ
の外側は比較的容易に汚れ(たんぱく質に富む痰)を除去して消毒液
の効果を出せるのですが、内腔を消毒するのは現実的にはかなり困難
なように思います。内腔面に付着した痰の成分を洗浄で除去できるかが
怪しいからです。これが出来ていないと、その後の手順が確実に有効だ
とは言えません。
 蓋付き万能つぼの抱えるリスクについては、再三指摘されてきました。
操作に伴う手指や器具の汚染リスクを排除するとなると、かなりの手間
隙をかけることになります。また、チューブを屈曲して保管する時、チュー
ブ内腔に完璧に液を満たす(浸漬する)こともかなり手間がかかります。
ただし、消エタベンザルの液の中で菌数を激減させられることは報告さ
れていますから、勤務毎に容器と液とを交換すれば、つぼが培地になる
ことだけは避けられるでしょう。
 リンス液は、滅菌水が望ましいのですが、0.025%塩化ベンザルコニウ
ムなら粘膜に使用可能です。ただし、消毒液との認識で0.025%塩化ベン
ザルコニウムを用いているなら、汚染リスクに注意を払わなくなるので
かえって逆効果かもしれません。
 アメリカでもこの問題では困っているようで、ネット上で個々人の工夫が
公開されています。気管内吸引チューブが保険では、1日3本しか認めら
れないのに、かぜや感染症などの場合、1日に何十回も痰を吸引するの
にどうすればよいか論議されています。
 ただ注意すべき点は、アメリカでは患者さん個人がカテーテルの再使
用を検討するのは自己決定なので良いことになりますが、施設が患者
さんに再使用を行なう時は責任が施設にあるということです。今の日本
で処置の経済性を考える時、現行の給付でディスポ対応しなければな
らないと決められれば、1日中頻回に吸引を必要とする患者さんを看て
くれる施設がなくなってしまうおそれがあります。この問題についての現
実的な解決は、個々の医療機関の責任で考えなければなりません。
対策の最終目標が気管切開患者における気道の細菌・真菌感染症を
最小化することにあるとして、処置全体を見直すことが大切と考えます。
 院内発生肺炎は、
  @体調、抗菌剤の使用、術後かどうか、カテーテルの使用、吸引療
   法が背景で、
  A咽喉頭の保菌、胃食道逆流による誤嚥と汚染蒸気の吸引とが直
   接因子と成って、
  B肺の防御能が破錠すると発生する、
と考えられます。
 ICUにおいては、@の因子が大きく働いており、肺炎リスクが高くなっ
ています。
 逆に、在宅ではこのリスクは小さいと考えられます。中間の位置では、
原則はあくまで滅菌されたカテーテルの使用にあるとしても、肺炎発生
抑制効果はICUに比べて見えにくく、かつ医療費の給付も少ないという、
感染対策の費用対効果の悪い状況にあると考えます。現実的な短期
目標として、状態が安定している方では理学療法など吸引回数を減らす
ための努力をされ、頻回の吸引を必要とする方では保菌状態の調査や
処置時の手技の見直しとカテーテルの単回使用を試みられるのが良い
のではないでしょうか。
 どうしても再利用しなければならないとすれば、セミナーで先生が述べ
たように、気管内チューブの乾燥を基本にされたほうが良いと思います。
実際、当院では外来に吸引している患者さんが受診された場合に、吸引
に使用したカテーテルは外側の汚れを単包のアルコール綿で拭い去り、
中は滅菌水で反復吸引洗浄した後、空気の吸引をして乾燥後(先生はア
ルコールの吸引を薦めておりました)元の袋に戻して再吸引に備えてお
ります。(元の袋に戻すのは手間がかかるのですが、そのための人件費
については計算しておりません。)
 以上、参考にならないかもしれませんが、全体の手順の見直しでリスク
マネジメントをされることを提案させていただきました。

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